出産後、なぜ夫婦関係は揺らぐの?
赤ちゃんは、すべてを一度に変えます。睡眠、毎日のリズム、出産した人のからだ、家の段取り、実家や義実家との関係。この嵐のなかで、夫婦のことは後回しになります。当然です。生まれたばかりの赤ちゃんは待ってくれません。
つまり、個人の失敗でも関係の終わりでもなく、多くの夫婦が通る立て直しの時期です。日本では「産後クライシス」と呼ばれることもあります。
いつまで続くの?
よくある期間というものはありません。最初の数か月がいちばん大変なことが多く、夜にまとまって眠れるようになり、新しい段取りが見つかるまで続きます。
ただ、「そのうち落ち着く」と待つだけでは足りないこともあります。夫婦を8年間追った研究では、出産後に下がった関係の質は、ひとりでに元に戻りはしませんでした。だからこそ、距離が定着する前に、小さな一歩から始めることに意味があります。
つまずきやすい5つのところ
出産後の衝突は、たいてい同じところで起きます。名前をつけるだけで、的外れなけんかを減らせます。
睡眠
2時間おきに起こされる生活では、誰でもイライラします。夜中の3時のけんかは、たいてい本当の問題についてではありません。
やってみよう: 夜の担当を前もって決めておきましょう。交代制にする、週末はひと晩ずつまとめて眠る、など。
名もなき家事
予防接種の予約、おむつの補充、小さくなった肌着の買い替え。このリストをひとりで抱えていると、疲れはやがて恨みに変わります。総務省の調査では、6歳未満の子どもがいる夫婦の1日の家事・育児などの時間は、妻が7時間28分、夫が1時間54分でした。
やってみよう: 考えることをふたりで全部書き出して、細かい作業ではなく「分野ごと」に分け合いましょう。
「誰が何を考えているか」リストを作る →ふたりの時間
会話が段取りの話だけになっていきます。ふたりだけの時間がないと、とても有能なルームメイトのようになってしまいます。
やってみよう: 1日10分、スマホなしで、子どもの話もしない時間を。
今夜のアイデアを引く →スキンシップ
疲れ、変わっていくからだ、ホルモン、ひとりになれない毎日。気持ちが戻るには時間がかかることが多く、そのペースはふたりで同じとは限りません。よくあることですし、話し合うことができます。
やってみよう: 期待を込めないスキンシップから。ハグ、マッサージ、やさしい一言。からだのことは、助産師や医師に相談してください。
ふたりのペースでスキンシップを取り戻す →新しい役割
それぞれが、親としての役割を手探りで見つけていきます。不安もあるし、相手の期待とずれることもある。「そうじゃなくて」は、すぐに口から出てきます。
やってみよう: 期待が文句に変わる前に、言葉にして伝えましょう。
傷つけ合わないけんかのしかた →ふたりを守るもの
ワシントン大学の研究は、うまくいかない夫婦を数えただけではありません。満足度が保たれた母親では、パートナーが愛情を示し、彼女とふたりの関係に関心を持ち続けていました。反対に、毎日が混乱していると感じている夫婦では、満足度が下がりやすい傾向がありました。研究を率いた研究者は、ここから3つのアドバイスを導いています。
- 愛情を育てる相手の好きなところを言葉にする、ふれる、ありがとうを言う。調子のいい日だけでなく。
- 相手の毎日に関心を持つその日の出来事、心配ごと、やりたいこと。予定の確認だけでなく。そして、ふた言でもいいから返事をする。
- ふたりで解決するお互いに向き合うのではなく、ふたりで問題に向き合う。
特別なことは何もありません。数分でできることを、くり返すだけです。
4週間のプラン
大がかりなことはしません。1週間にひとつ、ふたりのペースで。
- 1週目
- 2週目
- 3週目
-
4週目
ふり返る
変わったこと、続けたいこと、そして次の「ふたりの夜」の日にち。
専門家に相談したほうがいいのは、どんなとき?
このサイトは医療的なアドバイスをしていません。ただ、こんなサインがあるときは、ふたりのどちらであっても、専門家に話してみてください。
- 悲しさや不安、疲れが長く続いて、頭の中がそれでいっぱいになっている。
- けんかが毎日のようになったり、相手を深く傷つけるものになったり、まったく話せなくなったりしている。
- どちらかが、相手をこわいと感じている。
相談先:健診を受けている産婦人科や助産師、小児科、お住まいの市区町村の保健師(こども家庭センターなど)、心療内科やカウンセラー。
出産後2週間や1か月ごろの産婦健康診査では、多くの場合、からだだけでなく気持ちの状態も確かめます。出産後1年以内の母子が休息や授乳の相談に使える「産後ケア事業」を行っている市区町村もあります。費用や条件は市区町村ごとに違うので、窓口で確かめてください。
つらくてどうしようもないときは、よりそいホットライン(0120-279-338)が24時間、無料で話を聞いてくれます。
パートナーからの暴力に悩んでいるときは、DV相談+(0120-279-889)が24時間受け付けています。チャットでも相談できます。命の危険があるときは、迷わず110番へ。
よくある質問
出産後、パートナーとの距離を感じるのは普通?
はい、とてもよくあることです。睡眠不足、名もなき家事、赤ちゃんに取られる時間のせいで、最初の数か月は多くの夫婦が離れていくように感じます。愛情がなくなったしるしではありません。ふたりの小さな時間を定期的に持つことと、家事や育児の分担を見直すことが、ふたりに戻る助けになります。
産後の夫婦関係の悪化は、いつまで続く?
よくある期間はありません。新しい段取りが見つかるまでの最初の数か月が、いちばん大変なことが多いです。ただ、何も変えなければ長引くこともあります。早めに、小さな一歩から始めるのがおすすめです。
子どもが生まれたあと、夫婦はどうやってふたりに戻ればいい?
大きな旅行より、小さな一歩の積み重ねで。1日ひとつの愛情表現、相手の毎日への関心、ふたりで解決すること。ワシントン大学の研究がすすめていることです。そこに夜の担当と名もなき家事の見直し、毎晩10分のふたりの時間を加えましょう。このページの4週間プランが、始めるきっかけになります。
産後のパートナーを、どう支えればいい?
何がいちばん助かるかを推測せずに聞くこと、夜も週末も交代をはっきり決めること、具体的な行動にありがとうを言うこと。すぐに解決策を出さずに話を聞くことも、大きな支えになります。悲しさや疲れが続くようなら、一緒に相談に行こうと提案してください。
子どもがいるのに夫婦のことを考えるのは、わがまま?
いいえ。ふたりの関係を大切にすることは、子どもを大切にすることでもあります。子どもは、ふたりの関係のなかで育つのですから。夜の10分は子どもから何も奪いませんし、次の日のふたりを助けてくれます。
子どもが生まれてから、離婚が頭をよぎる。どうすればいい?
つらい時期には、多くの親がそう考えます。疲れ切っているときに決めるのは避けましょう。ふたりとも休めているときに話し合い、カウンセラーなど第三者の力も借りてください。嵐が過ぎてから、またふたりに戻れる夫婦はたくさんいます。
参考にした研究と調査
- Shapiro, Gottman, Carrère(2000)"The baby and the marriage", Journal of Family Psychology(ワシントン大学による紹介)
- Doss, Rhoades, Stanley, Markman(2009)"The Effect of the Transition to Parenthood on Relationship Quality: An 8-Year Prospective Study", Journal of Personality and Social Psychology
- 総務省統計局(2022)『令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要』